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福岡家庭裁判所 昭和61年(少)10867号 決定

少年 S・K(昭41.8.13生)

主文

この事件について審判を開始しない。

理由

本件送致事実は、「少年は、沖縄県公安委員会から原付免許証の交付を受けたものであるが、父親から免許証を取り上げられたことから右免許証を紛失したかのように偽つて運転免許証の再交付を受けようと企て、昭和58年2月10日○○警察署に赴き、警察官Aに対し、実際は紛失していないのに前記運転免許証を遺失した旨の虚偽の届出をなし、同日同警察署にて運転免許証遺失顛末書の交付を受けた上同日沖縄県那覇市○×丁目××番××号○○県警察本部交通部運転免許課運転免許試験場に赴き、同試験場の係員に対し、前記遺失顛末書を添えて運転免許証再交付申請書を提出し、あたかも真実免許証を遺失したかのごとく装い免許証の再交付申請をなし、同係員をしてその旨誤信せしめ、同日前記試験場において、同試験場係員から沖縄県公安委員会発行の原付免許証(第××××××××××××号)1通の交付を受け、もつて不正な手段により運転免許証の交付を受けたものである。」というのである。

ところで、道路交通法117条の3第2号の免許証不正受交付罪の公訴時効の期間は、刑事訴訟法250条5号、道路交通法117条の3第2号により3年であるから、少年が本件送致事実のような免許証の不正受交付をなしたとしても、それについては、その行為が終了した昭和58年2月10日から3年を経過した昭和61年2月9日の経過により公訴時効が完成しているものであるところ、本件が上記時効完成後である昭和61年2月21日家庭裁判所に送致されたことは記録上明らかである。

そうすると、公訴時効制度の趣旨、精神等に照らし、本件は審判開始の要件を欠くものと解する。

よつて、この事件について審判を開始しないこととし、少年法19条1項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 松並重雄)

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